2026年01月09日
自動運転サービス市場に変化-NTTモビリティ株式会社が2028年にレベル4自動運転バスの運行を開始すると発表して話題に。
総合ICT事業を展開し、通信事業国内最大手のひとつであるNTT株式会社は、「より安心・安全でサステナブルな自動運転の仕組みの確立と自動運転社会の実現」をめざし、2025年12月に、NTTモビリティ株式会社(以下NTTモビリティ)を設立。NTTの100%子会社としてモビリティ業界に参入することが公表されました。 NTTモビリティとはどんな法人なのか、レベル4自動運転バス導入についてなど、詳しく掘り下げてみたいと思います。
読者の関心度
★★★★☆
4
※ 各読者がページに費やす時間によって決まります。
片倉 好敬
Katakura Yoshitaka
アベントゥーライフ株式会社
代表取締役 兼 CEO
はじめに‐日本の現状と自動運転技術の必要性
現代の日本にはさまざまな交通課題があり、その問題解決に自動運転技術が役立つと期待されています。
①交通機関のドライバー不足
交通機関のドライバー不足は、日本の社会問題として広く認識されています。とくに路線バスの運転士は常に不足しており、過去10年で毎年平均1,480km超の路線が廃止されています。地方部では、バス廃止により、地域住民の移動手段が圧迫されており、大きな課題だと言われているのです。
特にバスのドライバーは年々高齢化が進んでいると言われています。全産業平均では従業員に占める60代以上の割合が約12という数字に対し、バス業界の割合は、平均値の2倍、約25%です。そのため今後10年間で40%以上のドライバーの定年退職が見込まれており、さらなる人手不足の深刻化が懸念されているのです。
人材の確保も必要ですが、路線バスの自動化を推進することで、上記の課題解決に繋がると期待されているのです。
②交通事故件数削減
自動運転システムは、基本的に交通ルールを順守して走行するように設計されているので、法定速度や一時停止などの交通ルール順守はもちろん、歩行者やパーソナルモビリティ運転者の動向を予測して減速・停止するなど、車両を安全に制御することが可能です。そのため、正しくシステムが作動することが大前提とはいえ、交通事故の件数を大幅に削減させる効果が見込まれています。
③運転者の負担軽減
自家用車の自走化が進ねば、これまで必ず必要だった「車の操縦」という仕事をシステムがすべて担うことになるので、ドライバーの運転操作は一切不要です。本格的にレベル4の技術が実装されれば、移動時間を食事や仕事、睡眠に充てるなど、「セカンダリアクティビティ」の幅も大きく広がり、運転者の負担も軽減します。
もちろん運転が好きな方も多いと思いますが、「運転や駐車が苦手」「渋滞にはまると疲れてしまう」といった方も、今までより気軽に車に乗ることができるようになるでしょう。
④災害対策
万が一、災害が起こった際にも活躍が期待されています。
地震や台風などの自然災害が起きた際、住民の避難や物資の運搬には迅速な対応が求められますが、公助が行き届かないケースも多く、運転手の確保が難しい状況も多々あります。そんなときに自動運転車があれば、人手不要で移動・物流手段の確保ができるので、従来より速やかな対応が可能になります。また、カメラなどのセンサーを活用して路面状況や被害の範囲をデータ上で把握できるようになるでしょう。
NTTモビリティとはどんな会社なのか、法人設立の目的は?
NTTモビリティは、2025年12月15日に設立が完了したNTT株式会社の新しい法人で、「より安心・安全でサステナブルな自動運転の仕組みの確立と社会の実現を目指して事業を展開する予定」と公表されています。
移動サービスの自動化は、政府目標として
- 2025年度まで:約50か所
- 2027年度まで:100か所以上
の地域での実現が掲げられ、前章で触れた交通課題解決のためにも普及の推進が進んでいます。
NTTグループは、高速・高信頼の通信ネットワークサービスや全国各地での地域密着のリレーションなど、通信インフラ事業の強みを生かした実装をめざしており、これまで培った知見や技術を集約した「専業会社」を新たに設立することが決定しました。
日本での実現に向けては、安心・安全な運転車両の提供体制の確立、全国規模かつ標準化されたオペレーションの実現、日本の道路環境に適応するインフラ環境の整備など、様々な解決すべき課題が存在しています。より安心・安全でサステナブルな仕組みの確立と、社会実現をめざし、どのような取り組みがなされていくのか、今後の動きに注目していきたいですね。
NTTモビリティが対象とする自動運転交通は?
NTTモビリティは自動運転に特化した事業会社で、対象とする交通は主に、公共バス、オンデマンドバス、タクシーです。
NTTグループではこれまで、NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ、NTTドコモビジネス、NTTデータ等が関わり、実証実験を2年間で35件、全国各地で実施してきました。過去の経験や知見を集約し、2028年度までに運転手がいらない「レベル4」のサービス体制を整え、全国展開を本格化させると公表しています。
まずは路線バスから着手し、順次オンデマンドバスやロボットタクシーへと広げていく…そして2030年代に運転車両1,000台の導入と百億円規模の売上高を目指すとのこと、実装化が現実になる日も近いかもしれませんね。
自動運転のレベルは以下の4段階に定められています。
レベル1:運転支援
(システムが前後・左右のいずれかの車両制御を実施)
レベル2:特定条件下での自動運転機能
(高速道路での自動運転モード機能、LKAS+ACCなど)
レベル3:条件付自動運転
(システムが全ての運転タスクを実施するが、システムの介入要求等に対してドライバーの対応が必要)
レベル4:特定条件下における完全自動運転
(特定条件下においてシステムが全ての運転タスクを実施)
レベル5:完全自動運転
(システムが全ての運転タスクを実施)
現在、レベル4の実用化が各国で進んでいます。
https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf
NTTモビリティのビジネスモデルは、自動運転に関わるサービス全般
NTTモビリティは、ADK(Automated Driving Kitの略称)と、運営していくための体制やシステムなどのサービス全般を一気通貫で提供するビジネスモデルですが、車両自体は自社開発ではなく、連携するパートナー企業と開発(共同開発)したものを使用する…つまり、自動運転システムや車両は「作らない」という方針を明確にしています。
システムの開発や車両製造には手を出さず、外部ベンダーの技術を使うので、システム自体にNTTモビリティの技術者が直接手を加えることもないそう。
自治体や交通事業者が実際に導入するには、地域公共交通会議での協議、車両・システムの選定、走行ルートの設計と3Dマップ作成、運用者のトレーニング、そして実証実験と、長い家庭を経て実用化に至ります。運行開始後も遠隔での監視やメンテナンスが必要ですよね。
NTTグループでは、
- 地域やとの折衝や要件定義はNTT東西・ドコモビジネスが担う
- 車両調達から運用支援、遠隔監視までをNTTモビリティが受け持つ
と明確に役割分担をすることで、双方が「インテグレーター」としての重要な役割を果たします。
2028年の自動運転レベル4実現に向けたNTTモビリティの事業展開
前述したとおり、NTTモビリティは2028年に自動運転レベル4の体制を整えて全国展開を進めると公表しており、実用化に向けて「2軸」で開発を進める方針です。
- NTTグループ各社と連携して実証実験や実装案件の数をこなす軸
- 個別案件から得たデータや知見を統合モニタリングシステムなどの共通基盤に反映させる軸
という2軸を展開していく予定で、2026年2月にはNTT武蔵野研究開発センター内に「コクリエーションラボ」を開き、パートナー企業との協創や新技術検証の場を設けることが決まっています。また、統合モニタリングシステムの実証も2026年4月から同センターで開始。
将来的にはIOWN(アイオン)を使い、車載の走行制御機能の一部をクラウド側で処理して車両コストを下げるという構想もあるそうです。
また、道路側センサーから情報を取得して車両にフィードバックする「路車協調」の研究開発も進めており、車両センサーだけでは死角が生じる場面にも備える仕組みを構築予定です。
自動運転サービス市場の、気になる競合他社の状況とは
自動運転サービス市場には、現在大手通信会社が次々に参入しています。
たとえば、ソフトバンク子会社である「BOLDLY」は2016年に設立以降、2023年2月までに136回の実証実験を実施しています。
茨城県境町や羽田イノベーションシティで定常運行を行うなど、国内では最も実績が多い会社だと言えるでしょう。また、ソフトバンクとトヨタが出資する「MONET Technologies」も2025年1月から東京臨海副都心でサービス実証を開始。KDDIもティアフォーに出資し、50件以上の実証実験を重ねています。
NTTモビリティでは、「May Mobilityとの連携など、他社が手を出していない部分での競争」を重視する方針を示す一方、競合他社を含めて業界全体で市場の普及を進める必要があるという考えを示しています。
ちなみに、国土交通省では2030年度にレベル4の車両台数を1万台に増やすという目標を掲げています。NTTモビリティが目標とする1000台はその1割にあたり、政府目標を見ながらシェアを獲得し、事業を続けられる規模の獲得を目指すことを表明しています。
自動運転サービス市場の今後に注目
現在、需要と注目が高まっている自動運転サービス市場。
たとえば、米ウェイモ(Waymo)は2000台以上のロボタクシーを運行し、米テスラも2025年6月に類似サービスを開始。中国では百度(バイドゥ)のロボタクシーサービス「アポロ・ゴー」が1700万回以上の乗車を達成するなど、世界各国でも大きな動きが見られます。導入の難易度は高いですが、徐々に広がりを見せており、今後のトレンドになることが予測されているのです。
日本でも大手通信会社をはじめ、さまざまな企業が技術の開発・普及を目指して取り組みを進めています。
今後どのようなモビリティ社会へ変化していくのか、ぜひ注目していきたいですね。