2025年09月22日
MaaS×電動モビリティという新しい観光の選択肢 旅行先での移動はどうする?
皆さんはMaaSという概念をご存知でしょうか。 旅行を計画するとき、旅先でどんな移動手段を選びますか?観光地巡りや飲食店探しをする際、何を使ってどのように移動するのが良いか迷いますよね。 近年、国内旅行ブームが再燃し、いつもとは一味違った新鮮な体験を旅に求める方が増加傾向にあります。 それに合わせ、観光MaaSも徐々に発展してきています。 今回は、日本における交通の課題や、旅の付加価値を高める新しい移動手段「電動パーソナルモビリティ」の魅力、観光MaaSと併せた具体的な導入事例についてご紹介します。
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片倉 好敬
Katakura Yoshitaka
アベントゥーライフ株式会社
代表取締役 兼 CEO
旅先で悩むことが多いベストな移動手段探しとMaaS
旅行先にもよりますが、目的地に着いたらまず宿泊施設にチェックインし、観光スポットや食事処へ向かうケースが多いと思います。徒歩圏内にすべての娯楽や飲食店がある場合は良いですが、たいていの場合は車や公共交通機関を使って移動が必要です。
しかし渋滞リスクがある車の場合は、予定が押して焦ってしまうことも…。現地でのレンタカー手配や駐車場探しを面倒に感じる方も多いですし、タクシー利用は少し割高です。
電車やバスも便利ですが、「乗り継ぎが面倒」「行先によっては遠回りになってしまう」というデメリットがあります。
そんな観光地の移動手段探しや交通インフラの課題をスマートに解決するのが「MaaS」です。
Mobility as a Serviceの略称で、「サービスとしての移動」を意味する次世代交通サービスです。
都心部と地方で異なる交通の課題と観光MaaS
日本では都心部と地方部でそれぞれ異なる交通の課題があると言われています。
まず、都心部の場合、公共交通機関の使いやすさ改善が課題です。訪日観光客が増加傾向にある現代において、日本に訪れた外国人が必ず戸惑うのが、地下鉄、私鉄、JRが入り組んだ都心部の複雑な鉄道システムです。
言語理解の乏しい初見の方が、地上と地下で交わる複数の路線を駆使して迷わず目的地にたどり着くのは至難の業。ピークタイムの駅や電車の大混雑もストレスに繋がります。
加えて、電車やバスに乗る際は切符を買い、タクシーやシェアサイクルを利用する場合は別途手配が必要…など、諸々の手続きが複雑で面倒という難点があります。
一方、地方部では「そもそも公共交通機関が少ない」という根本的な問題が…。田舎の場合、電車やバスの本数が数時間に1本しかない場合も多いですよね。また車ありきでの移動が前提になっているなど、せっかく素敵な観光資源があっても足を運ぶハードルが高い場所が多々あります。
そこで、観光MaaSがその真価を発揮します。
今注目を集めている 観光MaaS で旅を次世代型にアップグレード
上記の課題を解決すべく、様々な自治体が取り組みを活発化させており、特に地方都市の交通手段の統合はめざましい発展を遂げている最中です。
「観光型MaaS」は、列車やバスなどの公共交通機関をはじめ、レンタカー・タクシーなど、さまざまな移動手段を組み合わせた移動経路の検索やチケットの予約・決済をアプリで一元化し、利用者のユーザビリティを高めることを目指しています。
定義されている「既存の移動手段統合」に留まらず、過去の訪問履歴や検索履歴、行動履歴などをモニタリングし、AIのおすすめ機能を用いて最適な観光地の提案やルート選択を行う画期的な次世代サービスです。以前から複数の自治体で実証実験が行われており、正式にアプリリリースされた事例もあります。
観光地での移動をワクワクに変えるMaaSと電動パーソナルモビリティ とは
電動パーソナルモビリティも、旅先での不便を解消する新しい移動手段としてMaaSと共に普及が進んでいます。導入のハードルが低く、観光客の回遊性向上にも繋がると今注目を集めており、自治体単位での導入事例も増えています。
乗るだけでも楽しいので、いつもとはちょっと異なるワクワク感を味わえるのも嬉しいですよね。窓やドアなど視界を遮る物もないので、旅先の美しい景色や観光地ならではの雰囲気を全身で感じることができます。
具体的にどのような電動パーソナルモビリティが観光地に導入されているのでしょうか。旅先で利用したいおすすめを5つご紹介します。
- 電動キックボード
- 電動スクーター
- 電動アシスト付き自転車
- 電動トゥクトゥク
- セグウェイ
1. 電動キックボード
近年、急速にシェアリングサービスが広がっている電動キックボード。街で見かけたことがある方も多いと思います。日常利用としても便利ですが、観光地での移動手段としても今注目を集めていますよ。電動キックボードのポートが設置されている宿泊施設を選べば、観光地周辺のアクセスがとても良くなるのでおすすめです。立ち乗りなのでちょっとした移動にぴったりですよ。
2. 電動スクーター
「立ち乗りは疲れそうだしちょっと怖い」という方にぴったりのモビリティが電動スクーターです。サドルが付いているので座って運転が可能!安定感もあります。
最近は折りたたみ式のコンパクトなモデルも販売されており、目的地まで車のトランクに積んで運搬し、到着後はスクーターで移動するといったアウトドアな使い方も可能です。
観光地によってはMaaSの1つとして車両のレンタルを行っている場所もあるので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。


3. 電動アシスト付き自転車
自分のペースでのんびりと移動を楽しみたい方にぴったりな自転車。旅先でのサイクリングはとても楽しいですよね。電動アシスト機能付きであれば、体力に自信がない方や、坂が多い場所でも安心です。
また、小さい子供がいる家族旅行の場合は電動キックボードや電動スクーターの利用ができません。しかし、MaaSの一つとして子供乗せ電動アシスト付き自転車の貸し出しがあれば、家族連れでも楽しく気軽に移動が可能です。「公共交通機関の利用は、子供が騒いでしまう可能性を考えると不安…。」という方にもおすすめですよ。
4.電動トゥクトゥク
「トゥクトゥク」と聞くと、東南アジアでの交通手段をイメージする方が多いですが、最近では日本の観光地でもレンタルサービスの導入が進んでいます。運転席に1名、リアに2名乗車できる3人乗りの車両が多く、三輪なので安定感があります。
友人同士のグループ旅行や家族旅行に人気で、アクティビティのような感覚で楽しむことができますよ。普通自動車免許を持っている方が一人いれば利用できる手軽さも嬉しいですよね。窓もないので走行時はとても開放感があります。
5.セグウェイ
2020年に生産終了を発表したセグウェイですが、「セグウェイツアー」は今でも一部の観光地で実施されています。アクティビティの一環として導入されている事例もあり、観光客から根強い人気があるモビリティです。
通常は公道走行ができず、乗れる場所も限られているからこそ、非日常的な経験として試してみたいと考える方も多いです。
MaaS×電動パーソナルモビリティで叶う、新たな移動の可能性
ちょっとした移動に便利な電動モビリティと、長距離移動に欠かせない公共交通機関や自動車。観光MaaSに両者を導入することで、それぞれの良さが最大限活かせると言われています。
自宅から観光地までの移動には飛行機や新幹線、電車、自家用車などの公共交通機関を「一次交通」として利用するケースが多いですよね。現地の移動手段である「二次交通」に電動モビリティのシェアサービスを導入し、一次交通と連携させることでどんな場所でもストレスのないシームレスな移動が叶います。
電動モビリティの都心部への導入は、「煩雑なルート検索や乗車手続きからの解放」に、地方部への導入は「観光客誘致や地域活性化」に繋がると期待されているのです。
MaaS×電動パーソナルモビリティを観光に活用した具体事例とは?
では、具体的にどのような取り組みが実施されているのでしょうか。事例をピックアップしてご紹介します。両方とも、現在サービスの利用が可能です。(2025年9月現在)
「日光・鬼怒川の移動をスマホ一つでスムーズに」をコンセプトとして掲げる本サービスは、東武鉄道が提供する環境配慮型・観光マーズです。東武線の運賃割引、指定区間乗り放題の電車・バスフリーパス、協賛店で使える特典のほか、シェアサイクルの予約も可能です。
貸し出しているモビリティは電動アシスト付き自転車で、電池の残量や利用可能台数も地図上でリアルタイムにチェックできますよ。
観光地としても人気が高い日光ですが、紅葉シーズンに起こる「いろは坂の大渋滞」は一種の名物とも言われているほど…。車以外の移動手段を推進するという観点でも画期的な取り組みだと評価されています。
日本の栃木県の日光市にある中禅寺湖と日光市を結ぶ美しい山道「色坂いろは坂」を眺めながら、カラフルな紅葉の森の中を複数のヘアピンが巻き付いています。
「仙台の移動をもっと自由に、スマートにするためのサービス」として開発された本サービスは、目的地までのルート検索からチケット購入まですべてwebで完結する観光客向けのサービスです。チケットを利用するときはスマホの画面を見せるだけでOKという手軽さも嬉しいですよね。仙台や周辺の観光をさらに楽しむための「おすすめ情報」も定期的に更新されており、旅先の知識を深める為のコンテンツとしても楽しめますよ。
公共交通機関の一日乗車券、タクシーの定額運賃サービス、観光スポットと移動手段がセットのパッケージプランはもちろん、電動シェアサイクルの予約や空き状況のリアルタイム確認も可能です。
次世代の移動サービス「MaaS」と電動パーソナルモビリティを活用して、旅をもっと快適に。
旅行の移動手段をもっと快適で楽しくするために、今、新たな交通サービスや電動モビリティの活用が進んでいます。
旅行を検討する際はぜひ、自身の目的地に合うサービスがないか探してみてくださいね。
いつもの旅が、さらに自由で快適になるはずです。
田宮有莉