記事の目次
- 観光×交通手段。ツーリズム業界におけるモビリティの歴史を紐解く
- 観光×交通手段。ツーリズム業界におけるモビリティの現状と課題
- 観光×交通手段。ツーリズム業界におけるモビリティの革新と未来の姿
- 宿泊者への電動アシスト自転車のレンタルサービスの魅力
- 宿泊客への電動キックボードのレンタルサービスの魅力
- 番外編:水牛に乗るアクティビティ、沖縄竹富島の観光戦略
- 近い将来、車が空を飛ぶ?革新的なモビリティ、未来の姿
- さまざまなモビリティを活用し、旅行に新しい付加価値を。
新しいサービスや技術が日々開発されています。多様な交通網は人々の生活を豊かにし、時に新しい発見を与えてくれるでしょう。そんな新しい動向にいち早く注目しているのがツーリズム業界です。新型コロナウィルスが落ち着いた今、「リベンジ旅行」ブームが再燃し、旅行需要向上に期待が寄せられています。訪日観光客数の増加により、国内観光地が賑わいを見せているのも最近の特徴です。旅先では、電車やバス、タクシーを使って目的地まで移動するのが一般的ですが、旅に付加価値を与えてくれるユニークな交通手段に近年注目が集まっています。今回はツーリズム業界がビジネスとして展開してきたモビリティサービスの変遷や、現在導入が進んでいる新しい取り組みについて紹介したいと思います。
遡ること約1200年。日本の庶民観光起源は平安時代、信仰から来る「お参り」が始まりでした。和歌山県から三重県にかけて連なる熊野山への参拝、「熊野詣」は特に有名です。交通手段もない当時は徒歩移動が当たり前でした。
戦乱の世が明けた江戸時代には「お伊勢参り」など信仰の旅や、療養のための「湯治」(温泉)を楽しむ庶民が増えました。参勤交代や物資の輸送をスムーズに行うために街道や宿場が整備されたことも流行を後押ししたと言われています。ですが、通行手形や関所など、制限も多かった江戸時代。庶民の主な移動手段は平安時代同様、徒歩でした。
明治時代になると関所が廃止され、交通手段にも変化が生まれました。人力車が誕生し、鉄道も開通。距離によって移動の方法を選ぶことができるようになり、文明が大きく発展します。
人力車は現代でも「趣のある名物移動手段」として浅草や鎌倉、京都などの観光地で活躍していますよね。狭い道でも小回りが利くので近距離移動に適しており、「日本の文化やおもてなしを楽しめる」と訪日観光客にも人気で、アクティビティの要素も兼ねています。趣あふれる景色を人力車に座って見る感動はひとしおです。
現代の日本には、電車、バス、タクシー、飛行機、船など数多くの交通手段があり、
旅行の際、これらの交通機関を使うことも多いでしょう。しかし観光地に住む地域住民からは「公共交通機関がいつも混雑している」「渋滞が酷く、生活に支障が生じている」という声が上がっており、「オーバーツーリズム」が問題になっています。移動手段は多様化しているものの、観光客の増加により交通機関が飽和状態に陥っているという課題があるのです。
一方、旅行客の目線に立つと、目的地へ移動する際「電車やバスだと遠回りだし、タクシーは高額。レンタカーは手配や返却に手間がかかり面倒」と思い、移動手段に悩むことが多々あります。徒歩より楽で、公共交通機関や車より手軽に使うことができる…そんな手段を求めている人は多いのではないでしょうか。
気軽に利用できて、旅に新鮮さや楽しさの付加価値を与える…新しいサービスとして電動アシスト自転車や電動キックボードなど、乗用具のシェアサービスを行うホテルが増えているのをご存じでしょうか。
「徒歩だと少し遠いけれど、車や電車を使うほどの距離ではない」という時のニーズに応える画期的な仕組みで、サイクリングをする感覚で身軽に行動できるのも魅力的です。旅の拠点として宿の魅力が上がるので、今多くの宿泊施設が注目しています。
前述した、公共交通機関の混雑などの「オーバーツーリズム」問題解決にも一役買うでしょう。
電動アシスト自転車とは、ペダルを漕ぐ力を電動モーターが補助して走行してくれる自転車のことです。通常の自転車より軽い力で走行することができるので、長距離移動や重い荷物を運搬するときに便利です。似た名称で「電動自転車」と呼ばれる乗用具がありますが、電動自転車との違いは「ペダルを自分で漕ぐ必要があるかどうか」です。電動アシスト自転車の場合はペダルを漕がないと前に進みません。
乗り心地や走行方法は自転車と同じなので、「少し遠くまでサイクリングしたいけれど、体力がないので不安」「普通の自転車だと坂道の上り下りが心配」という方に適しています。女性や高齢者から特に人気のあるサービスです。
今若年層の間で流行中の電動キックボード。最近は街中でも見かけることが多くなりました。一定の基準を満たした商品は「特定小型原動機付自転車」という車両に分類されるので、16歳以上であれば免許不要で運転することが可能です。操縦方法も簡単なので気軽に利用できるのも嬉しいポイントです。走行パワーがあり、時速20キロまで出すことができるので「少し足を延ばす遠出」にもぴったり。「観光の足」として観光客からも高い支持を得ており、今とても注目度が高いモビリティです。
沖縄県の離島、竹富島といえば水牛車に乗って島を巡る観光ツアーのイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。美しい集落の街並みを、海風を感じながら水牛車でゆっくり巡る旅は竹富島ならではの醍醐味。モビリティというと「近代的な電動技術を用いた移動手段」にフォーカスされがちですが、水牛車も立派な移動手段であり、動物の力を利用した活気的な観光戦略です。非日常を体験できる水牛車は、唯一無二の魅力であり、竹富島のアイコンにもなっています。
「空飛ぶクルマ」は自家用車のように少人数で乗車し、空中を移動することができる未来のモビリティです。大阪万博での展示が話題となり、近い将来実装されるのではないかと囁かれています。「空飛ぶクルマ」の実用化が進めば、渋滞の緩和はもちろん、医療現場や災害時での活躍、山間部へのスムーズな移動やインフラ整備にも役立つと期待が高まっているのです。地方創生や新たな観光地の開発、旅行時の移動手段としても有効なので、ツーリズム業界からも注目されています。
近年新しい取り組みを多々行っている観光業界。単なる「場所と場所の移動」ではなく、旅の体験に付加価値を与えるモビリティに今注目が集まっています。皆さんも宿泊施設を検討する際、最新モビリティのシェアサービスを検討してみてはいかがでしょうか。