2025年10月28日
パーソナルモビリティで巡る|玉名・夏目漱石『草枕』聖地旅 完全ガイド
熊本県玉名市を舞台に、夏目漱石『草枕』の世界をめぐる旅へ。草枕交流館や前田家別邸、草枕温泉てんすいを訪ね、文学碑を巡りながら、玉名ラーメンや有明海の海の幸などご当地グルメも堪能。パーソナルモビリティ(電動キックボード・Eバイク)で巡るからこそ、温泉・食・文学の魅力を一日で体感できるモデルコースを紹介します。
読者の関心度
★★★★☆
4
※ 各読者がページに費やす時間によって決まります。
片倉 好敬
Katakura Yoshitaka
アベントゥーライフ株式会社
代表取締役 兼 CEO
はじめに|文豪の視線と現代の旅をつなぐ
熊本県玉名市——。明治の文豪・夏目漱石が小説『草枕』(1906)で描いた“非人情”の視線は、この町の山道と温泉、そして素朴で豊かな食文化の中に今も息づいています。
漱石が作品を通して問いかけたのは「芸術家はいかに世界を見るべきか」。そしてその視線は、現代の旅人にも深い示唆を与えてくれます。
今の私たちは、パーソナルモビリティ(電動キックボード/Eバイク)を使うことで、文学の舞台・温泉街・地元グルメを1日の中に凝縮して体験できます。
徒歩では時間がかかり、車では通り過ぎてしまうスポットも、自分のペースでめぐれるのが最大の魅力です。
夏目漱石と『草枕』
漱石(1867–1916)は、森鷗外と並び称される近代日本文学の代表的作家で、かつては千円札の肖像にも採用されました。『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『こころ』など、今も広く読まれる作品を多数執筆しています。
『草枕』のあらすじとテーマ
1906年発表の『草枕』は、主人公の洋画家が山中の温泉宿(那古井温泉)を訪ねる3日間の物語。
「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される」という有名な一節は、感情や利害から距離を置く“非人情”の姿勢を表しています。
那美という存在
那古井温泉で出会う謎めいた女性・那美は、世間の規範にとらわれず生きる姿が印象的。主人公は、彼女の所作や表情に芸術的な美を見出します。
那美は玉名の豊かな自然や温泉の湯気に包まれる中で描かれ、その自由な生き方は土地の空気そのものとも重なります。
小天温泉・那古井館(前田家別邸)
夏目漱石『草枕』の舞台となった宿のモデル。漱石が実際に滞在した歴史ある旅館で、今もその雰囲気を伝えています。
出典:有限会社 悠人壮健(公式ブログ)
玉名の自然と文学の結び付き
玉名市小天地区は、緩やかな段丘と谷、棚田や畑の間に細い山道が続く里山の風景が広がります。晴れた日には有明海と島原半島を望み、夜には澄んだ空が広がる——漱石が求めた“熱から距離を置く”視点を、風景そのものが与えてくれる土地です。
作中の「温泉」は、現実の小天温泉がモデル。宿や湯は、俗世の喧騒から離れる装置として機能しています。
それでは、この自然と文学の舞台を実際に訪ねるために、どんなルートや移動手段があるのかを見ていきましょう。
草枕の道を巡る
モビリティならではの魅力
- 坂道を快適にクリアでき、文学碑や景勝地を効率的に回れる
- 歩くより広く、車より細やかに寄り道できる
- 「交流館→前田家別邸→温泉→グルメ」という流れを一日で楽しめる
主なスポット
- 草枕交流館:漱石資料や俳句募集コーナー
- 前田家別邸:那古井の宿のモデル、当時の浴場や間取りを見学
- 文学碑:作中の句や詩を刻んだ石碑が点在
- 草枕温泉てんすい:絶景の露天風呂で湯浴み
そして、玉名は温泉地としても有名です。文学散歩と湯巡りを同時に楽しめるのも、この旅の大きな魅力です。
温泉ガイド|湯と文学の交差点
1. 草枕温泉てんすい
高台に位置し、有明海と雲仙普賢岳を一望できる露天風呂が自慢。館内には『草枕』ゆかりの展示もあり、湯に浸かりながら漱石の世界に思いを馳せられます。
2. 小天温泉
『草枕』の舞台で、漱石が実際に宿泊した前田家別邸(現在は公開施設)が残ります。湯はややぬめりがあり、肌を包み込む優しい感触。
3. 玉名温泉
約1300年の歴史を持ち、「疋野長者伝説」にも登場する古湯。町中に老舗旅館や近代的ホテルが建ち並び、宿泊拠点に最適です。
温泉で身体を癒やしたら、次は玉名ならではの“味”で旅をさらに豊かにしましょう。
有明海と雲仙普賢岳を一望できる高台の温泉施設。夏目漱石『草枕』の世界を感じながら、絶景の湯浴みを楽しめます。
出典:草枕温泉てんすい 公式サイト
グルメガイド|玉名を味わい尽くす
1. 玉名ラーメン
濃厚豚骨スープに揚げニンニクを浮かべたスタイル。
- 桃苑:1963年創業、ミシュラン掲載の名店。
- 桂花ラーメン玉名店:熊本ラーメンの代表格。
2. 有明海の幸
ワタリガニ、タイ、アサリなど、新鮮な海産物が港から直送。港近くの食堂では、刺身定食や海鮮丼がリーズナブルに味わえます。
3. 農産物と郷土料理
菊池川流域の米、玉名レンコン、旬の野菜を使った田舎料理。地元直売所では新鮮な野菜や果物もお土産に。
4. 甘味と軽食
- 草枕まんじゅう:白餡の優しい甘さ
- いきなり団子:熊本の定番おやつ
- 季節のフルーツ(ミカン、イチゴ)
グルメでお腹を満たしたら、旅の締めくくりにおすすめなのが「泊まる」体験です。
玉名ラーメン(千龍)
玉名ラーメンの人気店「千龍」の一杯。焦がしニンニクの香ばしさと豚骨スープのコクが絶妙に調和し、地元客から観光客まで幅広く愛されています。
旅館ガイド|泊まって味わう“草枕”
那古井館
明治元年創業、小天温泉唯一の温泉旅館で、漱石が滞在した部屋を再現。文学ファンなら一度は泊まりたい宿。
ホテルしらさぎ(玉名温泉)
格式ある老舗ホテルで、大浴場と露天風呂を備え、地元食材を使った会席料理が楽しめます。
山もみじの宿 八芳園
全室に半露天風呂を備えた高級旅館。里山の景色を独占しながら、地産食材を使った創作懐石を堪能できます。
モデルコース(文学+温泉+グルメ)
所要時間:1日/モビリティ推奨
- 草枕交流館
『草枕』の展示や漱石の足跡を学び、旅のテーマを掴む。 - 前田家別邸(那古井の宿モデル)
漱石が実際に滞在した部屋や浴場を見学。作中の情景が立ち上がる瞬間。 - 文学碑めぐり
道中の句碑や歌碑で作品のフレーズと現地の風景を重ね合わせる。 - 草枕温泉てんすい
絶景の露天風呂で疲れを癒やし、『草枕』の余韻を感じる。 - 玉名ラーメン 桃苑
濃厚スープと揚げニンニクで旅のエネルギーを補給。 - 高瀬裏川花しょうぶ園(季節限定)
初夏は花しょうぶ、秋は紅葉が美しい。文学と自然の融合を体感。 - カフェで読書タイム
里山や川沿いのカフェでコーヒーと甘味を楽しみながら、漱石作品を再読。
高瀬裏川花しょうぶ
玉名市を代表する景観スポット。梅雨の時期には約6万株の花しょうぶが咲き誇り、紫や白の花々が石垣や町並みに彩りを添えます。『草枕』の文学碑も近くにあり、文学散歩とあわせて楽しめます。
まとめ|五感で楽しむ“草枕の町”
玉名は、『草枕』の舞台としての文学的価値だけでなく、歴史ある温泉地であり、海と山に囲まれた食の宝庫でもあります。
パーソナルモビリティで巡ることで、文学・温泉・グルメのすべてを1日の中で堪能できる——そんな贅沢な旅がここにはあります。
MobilitiXについて
MobilitiX(モビリティックス)は、電動キックボードやEバイクなどのパーソナルモビリティで広がる新しい旅のスタイルを提案するメディアです。
文学や歴史、地域の文化に寄り添いながら、効率的で自由度の高い観光ルートを紹介し、読者の「行ってみたい」を後押ししています。
出典一覧