2025年12月16日
雨と光の新宿ライド パーソナルモビリティで巡る『言の葉の庭』聖地巡礼 ―新海誠監督が描いた「孤独と愛」の距離―
「あの二人、また会えるだろうか。」 2013年に公開された新海誠監督の珠玉のアニメーション映画 『言の葉の庭』。 靴職人を目指す高校生・タカオ(秋月孝雄)と、謎めいた年上の女性・ユキノ(雪野百香里)が、雨の日の新宿御苑で出会い、限られた時間の中で心を通わせていく物語です。物語のあらすじ”梅雨の6月。靴職人を夢見る高校1年生のタカオは、雨の午前、学校を抜け出して日本庭園で靴のデッサンを描いていた。ある日、東屋で缶ビールを飲む年上の女性・ユキノと出会う。彼女は去り際に、一篇の万葉集をそっと口にする。 それから二人は、約束のない「雨の日だけの逢瀬」を重ね、少しずつ心を通わせていった。 居場所を見失ったというユキノのために、タカオは彼女の靴を作ろうと決意する。 やがて梅雨が明け、逢瀬は途切れてしまうが、二人はそれぞれの現実と心に向き合い、再び歩き出す勇気を見出していく。”この作品は、のちに大ヒット作 『君の名は。』 へとつながる重要な節目の一作。 近年では 『秒速5センチメートル』 が、主演・松村北斗さんと米津玄師さんの主題歌による実写映画として再評価され、新海作品の“普遍の情緒”は世代を超えて共鳴しています。 本記事では、『言の葉の庭』の舞台である東京・新宿を、電動キックボードやE-bikeなどのパーソナルモビリティで巡る、新しい聖地巡礼としてご案内します。 レンタルでも、自前モビリティでも構いません。雨のしずくが光に変わるように、あなた自身の速度で、映像の美しさと登場人物たちの心の軌跡をたどってみましょう。
読者の関心度
★★★★☆
4
※ 各読者がページに費やす時間によって決まります。
片倉 好敬
Katakura Yoshitaka
アベントゥーライフ株式会社
代表取締役 兼 CEO
言の葉の庭を描いた新海誠作品が人々の心を掴み続ける理由
世界を変えた「東京聖地化」
新海誠監督の作品が多くの人を惹きつける理由――
それは、「日常の風景をファンタジーに変える力」 にあります。
『君の名は。』では、四谷の須賀神社の階段や信濃町駅前の歩道橋といったありふれた東京の風景が、感動の舞台となり、ファンが訪れる“聖地”へと変わりました。
『秒速5センチメートル』の実写版では、主演の松村北斗さん(SixTONES)が切ない恋を繊細に演じ、米津玄師さんの主題歌が世代を超えて共感を呼びました。
そして『言の葉の庭』は、都会の真ん中にありながら静けさをたたえる新宿御苑を舞台に、
「日常と非日常」「孤独とぬくもり」――その淡いコントラストを最も美しく描いた作品です。
映画『言の葉の庭』の公式キービジュアル。雨の日の新宿御苑で出会う二人の情景を描いた一枚。
パーソナルモビリティで巡るメリット:喧騒と静寂のコントラスト
新宿の街をパーソナルモビリティで巡る醍醐味は、
「駅前の喧騒」から「御苑の静寂」へ――その対比を身体で感じられること。
レンタルPMなら手軽に、
自前モビリティなら自由に。
PMを使えば、ビル群からわずか数分で緑の庭園へ。
その短い移動の間に、現実と夢が入れ替わるような感覚が訪れます。
それこそが、新海監督が描く「孤独とつながりの距離感」を体験する瞬間です。
言の葉の庭の舞台・雨と光の新宿を駆け抜ける
新宿駅周辺:タカオの日常と声優・入野自由
旅のスタートは新宿駅南口のパーソナルモビリティポートから。
周辺には「NEWoMan」や「バスタ新宿」などが立ち並び、出発前にコーヒーを片手に準備を整えるのもおすすめです。
タカオが通う高校のモデルとなった東京都立新宿高等学校方面へ進む途中、雨に濡れた街路樹やガードレールが、映画の一場面のように見えてきます。
声優トリビア
主人公・タカオを演じたのは、入野自由(いりの・みゆ)さん。
ジブリ映画『千と千尋の神隠し』でハクを演じた実力派で、その透明感ある声が、夢を追う少年のまっすぐな情熱を見事に表現しました。
パーソナルモビリティで彼の通学路を辿ると、まるで耳の奥でタカオの声が雨音と溶け合うような感覚に包まれます。
スタジオジブリ映画『千と千尋の神隠し』のハク。
入野自由が声を担当し、少年の静けさと強さを見事に表現した。
新宿御苑という「秘密の庭」:東屋と声優・花澤香菜
御苑近くのポートでパーソナルモビリティを返却し、ここからは徒歩で園内へ。
自前のモビリティを持っている方は、園内への乗り入れが禁止されているため、外周の駐輪エリア(新宿門・大木戸門・千駄ヶ谷門付近)に停めてから入園しましょう。
新宿御苑はなぜ「秘密の庭」なのか
『言の葉の庭』の舞台である新宿御苑は、物語の核となる存在です。
その起源は江戸時代、信州高遠藩・内藤家の屋敷跡。
明治時代に日本初の近代的な西洋庭園として整備され、
今では イギリス風景式・フランス整形式・日本庭園 の三様式が融合した、都心随一の緑の楽園となっています。
「都会の中のオアシス」
新宿駅から徒歩10分とは思えない静けさの中で、
ユキノの心の傷も、タカオの孤独な情熱も、現実の雨から守られるように息づきます。
それはまるで、二人だけの“社会の雨から逃れる秘密のシェルター”のよう。
二人が出会う 東屋(あずまや) は、四方に開かれながら屋根に守られた空間。
「他者との間に壁を作りながらも、つながりを求める」――そんな二人の心をそのまま映しています。
開放と孤独。その構造は、新海監督が得意とする「空間と心の距離」の象徴でもあります。
花澤香菜が演じたユキノという存在
この「秘密の庭」で出会う女性、ユキノを演じたのは人気声優の花澤香菜さん。
その柔らかく澄んだ声は、「雨音が似合う声」と評されるほど静けさと温かみを併せ持ち、
聴く人の心に静かに寄り添います。
ユキノの孤独、年上の女性としての葛藤、そして儚い強さ。
花澤さんはその感情の揺らぎを、わずかな息遣いの変化で描きました。
特に、ユキノがタカオに短歌を教える場面では、
花澤さんの穏やかな声と新海監督の雨の描写が重なり、「言葉によって人が救われる」 というテーマが静かに胸に響きます。
代表作には『鬼滅の刃』の甘露寺蜜璃役などがあり、
彼女の声はまさに“感情の風景”を描く力を持っています。
小休憩のすすめ
御苑を散策したあとは、外周にある「アームウッドコテージ」や「カフェ・ラ・ボエム新宿御苑*」でひと休み。
緑に囲まれたテラス席で、雨上がりの香りを感じながら、二人の会話を思い返してみましょう。
パーソナルモビリティで御苑を拠点とする周遊のススメ
新宿御苑は広大で、新宿門・大木戸門・千駄ヶ谷門の三つの入口があります。
その周辺には、タカオが通う高校のモデル地やユキノの生活圏・千駄ヶ谷方面など、物語ゆかりのスポットが点在。
苑内はパーソナルモビリティの走行が禁止されていますが、
「御苑を拠点」として外周のポートを活用すれば、効率的に聖地を巡ることが可能です。
• 新宿門エリア:アクセス至便。スタート&ゴールに最適。
• 千駄ヶ谷門エリア:ユキノの生活圏に近く、静かな街並みが印象的。
• 大木戸門エリア:外苑西通り沿いにカフェや緑道があり、休憩にも便利。
都会の中で、雨と緑が織りなす“心の風景”を感じながら、
あなた自身のリズムで『言の葉の庭』の世界を辿ってみてください。

新宿御苑・日本庭園の中の島橋。
紅葉と松の緑が水面に映り込み、四季の移ろいを静かに映す。
まさに『言の葉の庭』が描く“都会の中の秘密の庭”を思わせる風景。
* カフェ・ラ・ボエム新宿御苑
大きな窓から新宿御苑の緑を望むクラシカルな空間で、雨の日も穏やかな時間を過ごせる。
聖地巡礼の途中に立ち寄りたい、静かな憩いのカフェ。
都会への帰還:孤独のスケールを体感する
御苑を後にして再びPMをレンタル。
タカオがアルバイトをしていた新宿大ガード下方面へ向かいます。
緑と静寂に包まれた世界から、再び人と光の洪水へ――
パーソナルモビリティで駆け抜けると、夢から現実への帰還を身体で感じるような感覚が訪れます。
夜のライドではライトと反射ベストを忘れずに。
安全を確保しながら、タカオの視点で夜の街を感じてみましょう。
そのまま新宿駅方面へ戻ると、
昼間とはまったく違う、ネオンと雨のきらめきが混ざる“もうひとつの新宿”が姿を見せます。
パーソナルモビリティを降り、少し立ち止まってその光景を眺めれば、
まるで映画のエンディングのように、心の中に静かな余韻が残るでしょう。
言の葉の庭が描いた、愛よりも前の感情。
『言の葉の庭』が人々の心を打つのは、
タカオとユキノの関係が恋愛の枠を超えた、
「愛を学ぶ前の、孤独な魂の救済」を描いているからです。
雨という共通の時間の中で出会い、言葉を交わすことで互いの心を映し合う二人。
それは“恋”ではなく、“生きる勇気”を取り戻すための出会いでした。
そして、主題歌 秦基博『Rain』 の旋律が流れるように、
パーソナルモビリティで巡るこの聖地巡礼もまた、あなたの心に静かな光と再生の余韻を残してくれるでしょう。
言の葉の庭の聖地・新宿で、もう一度あの雨を探しに。
新宿の街は、晴れの日も、雨の日も、それぞれに物語を持っています。
ビルの光が雨粒に反射し、舗道に傘の影が映る――
その瞬間に、日常の中の“物語”が立ち上がるのです。
さあ、あなたもパーソナルモビリティに乗って、
あるいは徒歩でゆっくりと、あの“言葉が花開く庭”へ。
雨と光が交わるその一瞬に、きっとあなたの中にも、
言葉にならないやさしい記憶が芽生えるはずです。
画像参照
・ヘッダー画像 : 新宿御苑 (東京都新宿区)
・フッター画像 : 新宿御苑 (東京都新宿区)