2025年09月26日
移動販売車は、買い物難民を解消し、高齢者を支える足になる !
皆さんは、食料品や日用品を積んで街を走るモビリティ、「移動販売車」を見たことがありますか?高齢者や足腰が弱く頻繁に外出できない方を対象とする買い物支援サービスで、移動手段に困っている買い物難民の救済を目的としています。移動販売車とはどんな車なのか、具体的な自治体への導入事例や2025年9月に新発売された次世代モビリティ「e-Palette」と合わせて紐解いていきたいと思います。
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片倉 好敬
Katakura Yoshitaka
アベントゥーライフ株式会社
代表取締役 兼 CEO
移動販売車の利用者の年齢や車の特徴を紹介
日本では現在、高齢者の約4人に1人が「買い物難民」に陥り、日常生活に支障をきたしていると言われています。
年を重ねると運動機能や認知機能が低下し、マイカーを手放して免許の自主返納を考える方も増えますよね。
自宅から徒歩圏内にスーパーがある場合は、車を持たなくても移動の苦労は少ないですが、地方部や山間部の場合は歩いて行ける距離に食料品店や商業施設もなく、公共交通機関が乏しいことも……。自力で食料や生活用品を調達するのが難しくなるケースが課題だち言われています。
そんな時、高齢者の支えになるサービスが「移動販売車」です。車内に日用品や食品を積んで地域を巡回してくれるので、遠くまで出かけなくても生活用品を調達できるようになります。
移動販売車を導入している自治体の事例
では、具体的にどのような形で導入されているのでしょうか。実際に高齢者支援の一環として取り入れている自治体の実例を紹介します。
①JAおきなわが運営する直売所を活かした買い物支援
沖縄県読谷村では、地元農家の新鮮な野菜を積んで地域を支える移動販売車「ゆんた号」が活躍しています。読谷村は沖縄県中部に位置する、透明感のある美しいビーチや豊かな自然が素敵な人口約4万人の村です。
買い物に不自由を感じている高齢者への食料品供給体制の整備や地域コミュニティの活性化、母店「
読谷ファーマーズマーケットゆんた市場」PRを目的に2011年に「ゆんた号」の導入を開始しています。
母店のファーマーズマーケットに出荷された新鮮な野菜や果物をトラック、肉類、魚介、惣菜などをトラックに積載して地域を巡回しており、「買い物が便利になった」「直売所まで行かなくても新鮮な食材が手に入る」と地域住民からも好評を得ています。
②鳥取県日野市による、「高齢者見守り」を兼ねた福祉サービス
鳥取県日野市は人口約2900人、そのうち高齢者の人口が約半分を占める小さな町です。
2022年9月に合同会社ひまわりによる日野町受託事業「ささえ愛コンビニ・プロジェクト」を開始しました。生鮮食品、飲物、調味料、弁当、日用品などの商品を積んだ移動販売車3台を用いて日野市全域を週2回巡回しています。市場から直接仕入れる鮮度の高い魚介類は特に、地域住民から好評です。
「ささえ愛コンビニ・プロジェクト」の特徴は、巡回販売時に「高齢者見守り業務」として月1回、独居の高齢者世帯の訪問を行っている点です。
さらに「高齢者暮らし支援業務」として日常の些細な困りごと(電球交換・買物代行など)も支援しています。高齢者の世帯が多い日野市ならではの画期的な取組です。
③愛媛県今治市の「離島の食生活を支える買物支援」
愛媛県今治市は愛媛県の北東部、瀬戸内海のほぼ中央部に位置する地域です。高縄半島と芸予諸島にまたがっており、中心市街地がある平野部、緑豊かな山間部、瀬戸内しまなみ海道、安芸灘とびしま海道が架かる変化に富んだ地勢が特徴です。
「
移動式スーパーしまトラくん」は人と人を繋ぐ地域密着型の移動式スーパー。生鮮品や惣菜などの加工品のほか、日配品や生活用品なども取り扱っています。
今治市の運行はもちろん、フェリーを乗り継ぐと片道3時間ほどの時間を要する魚島などの離島も月に2回周回することで利便性向上を目指しています。
魚島や因島など、遠方での販売から今治市内の母店に帰る際には、離島の特産品の仕入れも行い市内で販売するなど、市と島のパイプ的な役割も担っています。
食料品の買物環境が困難な離島民からのニーズも高く、現在も続いている活動です。
このように移動販売車は地方部を中心に多くの高齢者の買い物をサポートする貴重な支援策なのです。
移動販売車の未来、2025年9月に新発売された次世代モビリティ「e-Palette」とは?
2025年9月にトヨタ自動車株式会社が、さまざまなモビリティサービスに活用できるバッテリーEV「
e-Palette」(イーパレット)の販売を開始し、現在注目を集めています。
スタイリッシュで現代的な車体が特徴的で、広い室内空間や大型ウインドウガラスは開放感があります。
移動手段としての役割に留まらず、移動販売やキッチンカーなどの店舗営業サービスにも使えるよう設計されている点が大きな特徴です。
充電・給電機能はもちろん、近代的なデジタルサイネージの導入や自動運転システムの搭載、低床や大開口スライドドアなどアクセシビリティに配慮した構造など、現代の需要にマッチした機能も整備されており、とても機能的。
今後はまず「TOYOTA ARENA TOKYO」や周辺エリア、「Toyota Woven City」で導入を進め、輸送サービスでの活用や物品等を販売する移動型店舗など、さまざまな取り組みを行っていくと公表されています。
一部地域では自動運転の実証実験も進め、2027年度にはレベル4に準拠した自動運転システム搭載車の市場導入を目指しているとのこと。普及が進めば、移動販売がさらに便利で画期的な仕組みになると期待されていますよ。メーカー希望販売価格は29,000,000円です。
高齢者支援の役割を担う移動販売車。次世代モビリティの普及により、クルマの進化やサービス範囲拡大の可能性も大いにあると言えるでしょう。モビリティの今後にもぜひ注目してみてくださいね。